梨木香歩『家守綺譚』

庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多…本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。

亡くなった友人の家を守る主人公と、彼にちょっかいを出す四季折々の植物や不思議な生き物たちのお話。冒頭の「サルスベリ」がいきなり素晴らしく、ここからグイグイと小説の世界に引き込まれました。そして、読みすすめるにつれて懐かしい雰囲気の文章が心に染み渡り、気持ちが静かになっていくように感じました。いやいやこれは凄い小説です!

梨木香歩さんの作品は始めて読みましたが、自分の好みにピッタリあう作家さんだということがわかったので、これからどんどん読んでいこうと思います。とりあえず次は、本作にも名前のみ登場した村田くんが主人公の『村田エフェンディ滞土録』を読む予定。