有川浩『海の底』

4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地。停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の隊員が見た時、喧噪は悲鳴に変わっていた。巨大な赤い甲殻類の大群が基地を闊歩し、次々に人を「食べている!」自衛官は救出した子供たちと潜水艦へ立てこもるが、彼らはなぜか「歪んでいた」。一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく―

巨大なザリガニの大群が横須賀に襲来。県警や自衛隊が怪物退治に奔走する一方、子供たちが2人の自衛官とともに潜水艦に閉じ込められ救出を待つ、というお話。分量的には怪物と機動隊の闘いよりも、潜水艦の中の自衛官と子供たちの人間ドラマがメインになっていて、個人的にはパニック小説部分がもう少し多くてもよかったかなという気もしました。とはいえ相変わらずの明快なキャラクター設定と、緊迫感溢れるストーリー展開はエンターテイメントのお手本ともいえる内容。読後感も爽快でなかなか満足度は高かったです。