三津田信三『首無の如き祟るもの』

奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。二十三歳になった当主の長男・長寿郎が、三人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。犯人は現場から消えた長寿郎なのか?しかし逃げた形跡はどこにも見つからない。一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者が、いずれも首無し死体で見つかる。古く伝わる淡首様の祟りなのか、それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか―。

刀城言耶シリーズ第3作。横溝正史を思わせる土着的な集落、旧家をめぐる争いといったおなじみの道具立ては今回も健在。個人的にはこれだけでもけっこうな満足度合いですが、この作品では「首のない死体」というある意味使い古された題材を選びつつも、推理の前提となる事実の巧みなミスリード、ラストにおける見事などんでん返しの連続と、ミステリーとしてのクオリティもかなり高かったです。そして真相が明らかになった後、大ラスの不気味さもかなりのもの。ミステリーとホラーの融合が高いレベルで実現され、これまで読んだシリーズ3作の中ではベストといえるできだと思いました。