和田竜『忍びの国』

伊賀一の忍び、無門は西国からさらってきた侍大将の娘、お国の尻に敷かれ、忍び働きを怠けていた。主から示された百文の小銭欲しさに二年ぶりに敵の伊賀者を殺める。そこには「天正伊賀の乱」に導く謀略が張り巡らされていた。

のぼうの城』の和田竜氏の第二作。今回も前作に引き続いてキャラ立ち、ストーリー展開の速さなどエンタテイメントに徹した内容に加え、映像が目に浮かんでくるような描写も健在で、相変わらず好調な出来。キャラ設定が単純すぎたり、台詞回しが現代風だったりで、小説というよりもシナリオを読んでいるように感じられる部分もあるのですが、そのあたりは承知の上でやっているのかなとは思います。

帯にも書かれているように史実に基づいていることも売りのようで、ところどころ「この人物は後年〜で死亡した」みたいな情報が挿入されていたりするのですが、こういうのは「この人は今回の戦いでは死なないんだ」という風に読者の興を削ぐことにつながってしまうだけなので、あえて必要ないように感じました。

のぼうの城』『忍びの国』ともに読んで楽しい小説であったのは間違いありませんが、扱っている内容はかなり違うにもかかわらず読後感は似たような印象で、今後も同様の作風が続くのであれば、あえて全部読むことはないかもしれないと少し思いました。