有栖川有栖『女王国の城』

舞台は、急成長の途上にある宗教団体“人類協会”の聖地、神倉。大学に顔を見せない部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして就職活動中の望月、織田も同調、四人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。“城”と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し…。

シリーズ前作の『双頭の悪魔』から、なんと15年ぶりに発表された江神シリーズの第4作。今回は新興宗教の聖地となっている町とその総本山である城が舞台となっています。かなり分厚い作品ではありますが、ストーリーには緊迫感があり、冒険活劇的な展開も盛り込まれているため、比較的スイスイと読むことができました。推理小説研究会のメンバーがそれぞれ活躍する場面もきっちり描かれていて、以前からのファンなら久しぶりの彼らとの再会に、きっと懐かしい気分に浸れると思います。

本格ミステリーとしては、奇抜な設定を用いることなく、はりめぐらされた伏線を丹念につなぎ合わせてロジカルに真相を導く手堅い内容。長い割には解決部分がやや性急に感じられるところもあって、全体としてはまずまずの水準作といったところでしょうか。著者の構想では、長編としてはあと1冊でシリーズ終了の予定らしいですが、次の作品はできればもう少し早くお願いしたいものです。