川上弘美『神様』

川上弘美さんのデビュー作「神様」を含む9篇を収めた短編集。くまが隣人として普通に生活していたり、カッパに相談をもちかけられたり、ツボをこすると女の子が飛び出してきたりと、ストーリーの設定はおとぎ話かメルヘンかというところですが、そうした非現実的な風景の中で主人公が当たり前のように日常生活を過ごすゆるやかな雰囲気は非常に好ましかったです。一篇一篇は短いけれど、笑い、涙、恐怖、せつなさとそれぞれが心に何かを残してくれる物語。苦痛や不幸を叩きつけてくるような文学作品に疲れたときに、ぜひ読んでほしい傑作です。