ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』

アメリ東海岸に住むジェレミー・マーズは、巨大蜘蛛もの専門の人気ホラー作家を父に持つ15歳の少年。毎回キャストが変わり放送局も変わる、予測不可能で神出鬼没のテレビ番組「図書館」の大ファンだ。大おばからラスベガスのウェディングチャペルと電話ボックスを相続した母親とジェレミーは、そこに向けての大陸横断旅行を計画している。自分の電話ボックスに誰も出るはずのない電話を何度もかけていたジェレミーは、ある晩、耳慣れた声を聞く。「図書館」の主要キャラのフォックスだった。番組内で絶体絶命の窮地に立たされている彼女は、ある3冊の本を盗んで届けてほしいというのだ。フォックスは画面中の人物のはず。いったい、どうやって?ジェレミーはフォックスを救うため、自分の電話ボックスを探す旅に出る……。

早川書房の「プラチナ・ファンタジィ」の1冊。ファンタジーなのか、SFなのか、それとも純文学なのかなんとも分類しにくい不可思議な9篇が収められた短編集です。

この手の雰囲気の作品は比較的好みにはまることが多いので、かなり期待して読んだのですが、残念ながらこれはちょっとはまらなかったなあ…。理解するというよりは感じるべき小説群なのだと思うのですが、収められている作品のほとんとが結末に至っても物語が収束せず、まだお話は終わってないのに、「ここで終わり」と放り出されたような気持ちになってしまいました。そんな中でも比較的楽しく読めたのは、「妖精のハンドバッグ」「マジック・フォー・ビギナーズ」あたりでしょうか。