道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

これはなかなか。冒頭からいかにも「叙述トリック仕掛けてます!」的な違和感満載の描写が連発されて、いやが上にも期待感は高まりましたが、期待を上回る破壊力のあるオチには大満足。トリックが単なるミステリーのオチとして機能するだけでなく、作品の主題と関連しているのは見事だと思います。ラストの描写も秀逸。きちんと最後まで読みましょう。