小川洋子『ブラフマンの埋葬』

主人公の青年と、ブラフマンと名づけられた小動物との出会いから別れまでを描いた小説。ブラフマンはなんとなく犬っぽいイメージで読んでいたのですが、その正体(?)は最後まで明らかにされていません。

タイトルどおりこの小説のエンディングは、ブラフマンを埋葬するシーンで終わることになるのですが、それを知るのは読者ばかりで、主人公の青年は何も知らずにブラフマンとの楽しい日々を過ごしている。ここがうまいですね。小さな生き物を見て、癒されたりなごんだりしているだけ(もちろん実際にはそれだけではないですけどね)のストーリーであっても、幸せな生活がやがて失われることがあらかじめわかっているから、それがかけがえのない時間として大切なものに感じられる。残酷だからこそ素敵な物語だと思います。