R・D・ウィングフィールド『フロスト気質』

ハロウィーンの夜、ゴミの山から幼い少年の死体が発見されたのを手始めに、デントン市内でまたしても続発する難事件の数々。連続幼児刺傷犯が新たな罪を重ね、15歳の少女は誘拐され、身元不明の腐乱死体が見つかる……。これら事件の陣頭指揮に精を出すのは、ご存じ天下御免の仕事中毒、ジャック・フロスト警部その人。勝ち気な女性部長刑事を従えて、休暇返上で働く警部の雄姿をとくと見よ!

全国のミステリーファン待望のフロスト警部シリーズが、7年ぶりに登場です。これまで翻訳された3冊は、いずれも年末の「このミス」などで最上位を占めており、内容的にもその順位どおりの傑作でした。そして今回の新作も、期待にたがわずメチャクチャ面白かったです。

殺人、誘拐、身元不明の死体発見と次々と発生する大事件を抱え込み、天敵マレット警視や出世欲の塊キャシディ警部代行の嫌味をかわしつつ、寝る間も惜しんで行き当たりばったりながらも事件の解決に向けて猛進するフロスト警部はやっぱりカッコイイ。あまりにいろんなことが起こり過ぎて、フロスト警部ならずとも何がなんだかわからないほどに混乱してしまいますが、それだけに失敗を乗り越え一つずつ事件が解決していくにつれ、気分はスッキリ。そして少年を誘拐した容疑者を追い詰めていくクライマックスのシーンは、ものすごい盛り上がりっぷりでラストまで一気呵成。最初から最後まで充実しまくりの大傑作です!

残念ながら著者のウィングフィールド氏が昨年亡くなったため、フロスト警部シリーズの未訳はあと2作品のみ。早く読みたいような、早すぎてももったいないような複雑な気持ちですが、いずれにしても次の作品が待ち遠しいですね。