米澤穂信『クドリャフカの順番』

氷菓』『愚者のエンドロール』に続く、古典部シリーズ第3弾。
いよいよ待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部では、文集「氷菓」を作りすぎるという大問題が発生。そして学内では「十文字」と名乗る犯人による、奇妙な連続盗難事件が起こっていた。文集の完売を目指して、古典部知名度を上げるため、仲間たちに後押しされて奉太郎は事件の解決に挑むはめになる。

今回は古典部4人のそれぞれの一人称視点で物語は進んでいくのですが、誰が誰のことをどのように思っているのか、舞台の表裏を同時並行で見る楽しさがありました。学生時代を思い出させる懐かしい文化祭ネタも満載、もともとライトノベルのレーベル(角川スニーカー文庫)で出ていたシリーズだけに、この著者の作品としてはややそっちよりの内容ですね。
青春小説としては十分楽しめ、満足できる内容ですが、ミステリとしてはまずまずといったところでしょうか。当事者以外の人間が解くのはかなり困難だと思われる謎を、奉太郎に解決させるため、かなりの都合よく偶然と幸運が訪れるなあという感じ。それでも全体としては、謎解きと文集の完売という二つの目的をうまい具合に絡めて、最後もきっちり収めたなかなかの秀作だと思います。
延々引っ張ってきた文化祭も終わって、シリーズの今後が気になるところですが、新「図書館の主」みたいに名前のみ出てきて、描かれていない人物もいるので、個人的にはシリーズはまだ続くんじゃないかと推測しています。はたして…。