梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』
時は1899年。トルコの首都スタンブールに留学中の村田君は、毎日下宿の仲間と議論したり、拾った鸚鵡に翻弄されたり、神様同士の喧嘩に巻き込まれたり…それは、かけがえのない時間だった。だがある日、村田君に突然の帰還命令が。そして緊迫する政情と続いて起きた第一次世界大戦に友たちの運命は引き裂かれてゆく…
『家守綺譚』に名前のみ登場していた、村田青年のトルコ留学記。混沌とした時代を背景に、淡々とした随筆風の文章で時にニヤリとさせる描写を交えながら記される日々の生活がなんともいい雰囲気。中盤以降、物語はしだいにシリアスな様相を呈し、切ない展開の最終章を経ることで、それまでのすべてのエピソードがますます愛おしくなる。これは傑作です!
国際親善試合 日本 VS ガーナ
【日本】
GK 都築龍太
DF 駒野友一、田中マルクス闘莉王、中澤佑二、長友佑都
MF 遠藤保仁、中村俊輔(→69′本田圭佑)、中村憲剛(→89′阿部勇樹)、長谷部誠(→63′稲本潤一)
FW 岡崎慎司(→84′興梠慎三)、前田遼一(→69′玉田圭司)
(得点 中村憲剛 53'、玉田圭司 78'、岡崎慎司 79'、稲本潤一 83')
【ガーナ】
GK R・キングストン(→46′アマムー)
DF アッフル、メンサー(→46′アッド)、ペイントシル、ボルサー
MF アナン(→46′アッピアー)、L・キングストン(→74′インコーム)、ドラマニ(→46′アモアー)
ムンタリ(→86′ディッコー)、エシアン
FW ギャン
(得点 ギャン 31'、47'、アモアー 66')
ガーナがワールドカップ予選の直後で疲れていたとか、後半開始から4人も交代して別のチームになっていたとかいろいろあるにしても、どちらも相手の理由。反省すべき点は多々あるにせよ、後半2点ビハインドから逆転できたことは素直に喜びたいですね。せっかくだから本田をもう少し長い時間みてみたい気もしましたが…。
『ブロードウェイと銃弾』
1994年 アメリカ(99分)
監督:ウディ・アレン
出演:ジョン・キューザック、ダイアン・ウィースト、ジェニファー・ティリー
主人公のデビット(ジョン・キューザック)は若い劇作家。新作の上演が決まったまではよかったが、彼には次々と思いがけない問題が降りかかる。ギャングの顔役に演技力ゼロのショーガールを押しつけられ、主演女優をめぐる三角関係の愛に悩み、脚本のリライト騒動がおき、やがて殺人事件にも巻き込まれていく……。
ああ、これは面白い!冷静に考えると現実的にはありえないような設定なのですが、淀みなく流れるストーリー展開のおかげか見ている間は特に違和感もなく、俳優陣の魅力的な演技もあって素晴らしい傑作に仕上がっています。いつものアレン映画のようにニヤリとさせるだけではなく、真っ向勝負の大笑いを狙った上質のコメディ。ギャングの手下・チーチ役のチャズ・パルミンテリがいい感じ。
柳広司『ジョーカーゲーム』
結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」。これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」―結城中佐は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。
「このミステリーがすごい!」や本屋大賞で上位にランクインしたということで、柳さんの作品をはじめて読んでみました。あらすじからはもう少し重い内容を予想していたのですが、タイトルどおりまるでゲームのようなスパイたちの騙しあいを描いた完全なエンタテイメントでした。正直、それほど深く印象に残る内容ではなかったのですが、読んでいる間楽しかったことは間違いないです。
『ロスト・チルドレン』
1995年 フランス(113分)
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:ロン・パールマン、ジュディット・ヴィッテ、ドミニク・ピノン
大道芸人のワン(ロン・パールマン)は見た目に反して、優しく繊細な心を持つ青年。そんなワンが誘拐された弟を救うため、ミエット(ジュディット・ヴィッテ)と共に悪者に立ち向かう。
この映画の後に『アメリ』で大ヒットを記録した、ジャン=ピエール・ジュネ監督の作品。ダークな雰囲気の童話をそのまま映像にしたような、とでもいえばいいのか、終始薄暗い画面の中で、独特の世界観を小物一つにいたる細部にまでこだわって表現した映像美がとにかく素晴らしいですね。まともな大人がほとんど登場しないストーリー展開とあいまって、監督が丹精込めて仕上げた見世物小屋のような作品です。