ベルンハルト・シュリンク『朗読者』

15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」―ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。

『愛を読む人』というタイトルで映画化もされたこの作品、映画版は泣ける恋愛ものとして宣伝されていたようで、映画を観ていないのでよくわからない部分もあるのですが、小説を読んでみると単純なお涙頂戴の話ではないかなという印象でした。

15歳の少年と20歳以上離れた女性、ふたりの恋愛の行く末を描く小説ではあるのですが、主題としてはナチス戦争犯罪に関わってしまった女性の人生と、彼女の抱える秘密の方がメインといえるかもしれません。そして恋愛においては当事者であり、彼女の犯罪に関しては傍観者足らざるを得ない「ぼく」が、人生を通じて彼女とどのように向き合っていくのか。最後まで読み進めてみると、やはりある種の恋愛小説ではあったのかなと思うのですが、一般的な恋愛ものと思って読んでしまうとかなりイメージが違うような気がします。