金井美恵子『軽いめまい』

郊外の住宅地にある築七年の中古マンションで、夏実は夫と小三と幼稚園児二人の息子と暮らしている。専業主婦の暮らしに何といって不満もなく、不自由があるわけでもない。けれど蛇口から流れる水を眺めているときなどに覚える、放心に似ためまい。

金井さんの、読点でどんどん長文を紡いでいく独特の文体は少々読みづらいものの、主婦の日常生活における倦怠感を中心に延々と心の動きを描写するというこの小説のテーマにはよくあっていると思います。特に、ふと気づくと蛇口から勢いよく流れ出る水をじっと眺めている、というような日常の切り取り方が非常にうまくて、読んでいく中で何度も感心させられました。ストーリーが盛り上がるタイプの小説ではないので、少々読む人を選びそうな感じはしますが…。