森見登美彦『きつねのはなし』

「知り合いから妙なケモノをもらってね」篭の中で何かが身じろぎする気配がした。古道具店の主から風呂敷包みを託された青年が訪れた、奇妙な屋敷。彼はそこで魔に魅入られたのか。

この「きつねのはなし」は4つの短編からなる連作短編集。奇譚集と銘うたれており、他の森見作品とは若干テイストの違う作品になっています。

この短編集では、それぞれの作品において共通のモチーフや同じ名前の人物が登場するのですが、作品ごとにその設定が少しずつ異なっていて、その辺りの微妙な違和感が作品集全体の不思議な感触を演出しています。ただそのせいで、逆に「あれっ、これはどうなってるの?」という風に少々スッキリしないところがなきにしもあらず。すべてが理に落ちるわけではないからこそ奇譚だということなんでしょうけどね。