『スラムドッグ$ミリオネア』

2008年 イギリス/アメリカ(120分)
監督:ダニー・ボイル
出演:デヴ・パテル、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピント


テレビ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、賞金を獲得したジャマール(デヴ・パテル)だったが、インドのスラム街で育った少年が正解を知るはずがないと不正を疑われ逮捕される。ジャマールになぜこれほどの知識があり、この番組に出演するに至ったのか。警察の尋問によって、真実が明らかになっていく。

インドのスラム街などを主な舞台としながらも、映像や音楽など非常に洒落た映画になっていたのにまず感心しました。もちろん単なるオシャレ映画ではなく、スピーディでドラマティックな展開で最後まで引っ張るストーリーの力も素晴らしかったです。

日本でもおなじみの「クイズ$ミリオネア」に出場したスラム街出身の若者が、最後の一問までたどりつくという冒頭からは、彼がラストの問題に正解できるかどうかが物語のクライマックスになるであろうことが容易に想像できます。しかし、ラスト付近に訪れるそのシーンにおいては、もはや彼がミリオネアになれるかどうかは真に重要な問題ではなく、物語の焦点は彼が人生の中で決してあきらめることなく追い求めてきたものへと移り変わっています。

なぜ彼がクイズに正解できたのか、青年の生い立ちや恋愛などを描きながら明らかにしつつ、観客の予想をいい方に裏切ってくれるこのあたりのストーリー展開はなかなか見事だと思いました。エンディングのダンスシーンまで、インドという国が持つ独特のパワーが映画全体にみなぎる傑作。これは観てよかったです。