津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』

身長175センチ、22歳、処女。いや、「女の童貞」と呼んでほしい―就職が決まった大学四年生のだるい日常の底に潜む、うっすらとした、だが、すぐそこにある悪意。そしてかすかな希望…?

ユーモラスな雰囲気をまとった文章から、序盤はやや軽い印象を受けたのですが、最後まで読みきってみるとなかなか重いテーマが扱われていました。そして、それにも関わらず、日常的な描写と、重い内容の描写にそれほど温度差がなく、淡々とした筆致が最後まで貫かれているところに非常に好感を持ちました。

タイトルの「君は永遠にそいつらより若い」というフレーズは、小説のラスト付近で登場するのですが、まさかそういう使われ方をするとは、とちょっとビックリ。このあたりの伏線の効かせ方は、デビュー作と思えないほどうまいです。

扱っているテーマ自体が、それほど楽しく読めるような内容ではなかったので、ふだんエンターテイメント系の小説にどっぷり浸かっている身としては、この著者をこれからどんどん読んでいこうという感じでもないのですが、ふと思い出した頃にまた作品をチェックしたい作家さんではあります。