桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』

「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。

高度経済成長期に製鉄業で財をなした鳥取の旧家・赤朽葉家が、時代とともに姿を変えていくさまを背景に、祖母・万葉、母・毛毬、語り手である娘・瞳子の親子3代を主人公として描かれた重厚な年代記

あえて個々のエピソードや他の登場人物の思考・感情などを深く掘り下げることなく、主人公の3人との関係性や印象的な事実のみを中心に記述するスタイルは、むしろ想像力をはたらかせる余地が大きく、非常に魅力的だと感じました。

また、第三部にはミステリーの要素も盛り込まれていて、序盤の印象的な伏線がラストで見事に回収される謎解きは、なかなかよかったと思います。桜庭さんの小説を読んだのはまだ2冊目ですが、いずれもかなりの好印象。これからいろいろと読んでいきたいですね。