『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

2008年 アメリカ(167分)
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピットケイト・ブランシェットティルダ・スウィントン


80代の男性として誕生し、そこから徐々に若返っていく運命のもとに生まれた男ベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)。時間の流れを止められず、誰とも違う数奇な人生を歩まなくてはならない彼は、愛する人との出会いと別れを経験し、人生の喜びや死の悲しみを知りながら、時間を刻んでいくが……。

老人の肉体をもって生まれ、時間とともに若返っていくという設定は、予告編などでもかなり有名になっていると思いますが、奇抜なのはこの設定だけで、描かれているドラマは地に足のついた非常に落ち着いた内容になっていました。

ストーリーの主軸になるのは、ベンジャミンと運命の女性であるデイジーとのロマンスですが、もちろんそれだけの単純な恋愛映画ではありません。ベンジャミンと多くの人々との出会いやエピソードを丹念に積み重ねて、いつかは永遠に別れなければならないことを常に意識しながら生きることの痛みや、人生は思い通りにいかないことばかりだけれど、願い続ければ望みはいつか必ずかなうというメッセージが、全編を通じて静かなトーンで表現されています。

シーンの転換が比較的多いので、長時間の映画にも関わらずまったく退屈するようなところはなかったし、その割には一つ一つの場面がじっくりと描かれており、いろいろなことを考えながら観ることができて見ごたえは充分でした。ストーリーに波乱万丈とか意外性を求めると、少し違うと感じてしまうかもしれませんが、誰にも訪れる誕生、出会い、別れ、死という人生が本当に当たり前のものなのか、改めて考えさせてくれる秀作。観て損はないと思います。