『ロゼッタ』

1999年 ベルギー/フランス(93分)
監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:エミリー・ドゥケンヌ、アンヌ・イェルノー、ファブリツィオ・ロンジョーネ


キャンプ場のトレーラーハウスで酒浸りの母と暮らす少女ロゼッタ。ある日、彼女は理由もなく職場をクビになってしまう。ロゼッタは厳しい社会の現実にぶつかりながらも必死で新しい仕事を探しつづけるのだが……。

主人公のロゼッタは仕事をクビになり、新しい仕事をようやく見つけたと思ったとたんまたも解雇されてしまう。家に帰れば酒びたりの母親と罵りあい喧嘩をしながら、彼女の世話をする苦しい暮らし。そんなギリギリの状況でも、人の助けを得ることをよしとせず、自分を失うことのないよう必死に奔走する。
健気な少女の感動映画にしようと思えばいくらでもできそうな設定ですが、この作品ではロゼッタの生活を至近距離から追いかけることで、彼女の必死な生き方を徹底的に現実的な目線でとらえています。そして追い詰められた彼女は、物語のクライマックスでついにある一線を越えてしまうことになるのですが、このシーンは彼女の痛いほど強い生への執着を強烈に感じさせてくれました。きれいごとではない人間そのものを描く思いのほか苦い味わいの映画でしたが、それだけに強い印象を残してくれると思います。