金城一紀『GO』

広い世界を見るんだ―。僕は“在日朝鮮人”から“在日韓国人”に国籍を変え、民族学校ではなく都内の男子高に入学した。小さな円から脱け出て、『広い世界』へと飛び込む選択をしたのだ。でも、それはなかなか厳しい選択でもあったのだが。ある日、友人の誕生パーティーで一人の女の子と出会った。彼女はとても可愛かった―。

第123回直木賞受賞作。在日朝鮮人の少年と日本人の少女の恋愛を描く青春小説です。冒頭ではこの小説が一切の主義に関わらない、恋愛に関する物語であることが宣言されていますが、もちろん主人公の背景として在日であることが大きな影響を及ぼしており、むしろ小説の主たる内容は在日であるところの主人公のエピソードを描くことにあったような気がします。

重いテーマを描きながら、必要以上に暗くならず、スピード感あふれるストーリーで非常に読みやすく、また、在日の人々の生活がどのようなものか、普段目をそむけがちなことを考えるにはいいきっかけになったと思います。かっこよすぎる主人公に多少違和感を覚えないではないですが、エンターテイメントとしても充分楽しむことができました。