ポール・アルテ『虎の首』

休暇から戻ったツイスト博士を出迎えたのは、事件の捜査で疲れ切ったハースト警部。郊外のレドンナム村で、次いでロンドンの駅で、切断され、スーツケースに詰めこまれた女性の腕と足が見つかったのだ。警部の依頼を待つまでもなく事件に興味を持った博士だったが、すぐにその顔色が変わった。駅から戻って蓋を開いた博士のスーツケースから出てきた物は……いっぽう事件の発端となったレドンナム村では、密室でインド帰りの元軍人が殺される怪事件が起きていた。なんと犯人は、杖から出現した魔神だと言うのだが…

連続して発見されたバラバラ死体に、衆人監視の中での密室殺人と、相変わらずクラシックな道具立てが魅力的。「虎の首」と呼ばれるこん棒をこすると魔人が現れて殺人を犯すという謎は、ディクスン・カー島田荘司かといった感じで、ワクワクさせられました。

ただ、事件の派手さの割に真相は意外と地味なんですよね。特に無理筋があるというわけでもないんですけど、真相が解明されても「なるほどなるほど」という程度の感想しか浮かんできませんでした。とりあえず、去年までは年に1冊ずつ翻訳されてきたアルテの作品が、今年から2冊ずつ出ることになったみたいなのでよかったね、ということで…。