『陽炎座』

1981年 日本(139分)
監督:鈴木清順
出演:松田優作大楠道代中村嘉葎雄


1926年、東京。新派の劇作家である松崎(松田優作)は落とした付け文が縁で品子(大楠道代)と出会う。その後も偶然による2度の出会いを重ね、2人は一夜を共にするが、その部屋がパトロンの玉脇(中村嘉葎雄)の部屋にそっくりであることに驚く。やがて松崎は品子の「金沢で待つ」という手紙に誘い出されるが、品子は手紙を出した憶えはないという。玉脇に品子との心中をしつこくそそのかされ、逃げ出した松崎はアナーキストの和田と知りあう。不思議な祭り囃子に導かれて奇妙な芝居小屋・陽炎座に辿りつくが…。

鈴木清順監督、松田優作主演の1981年の映画。原作は泉鏡花。前年の「ツィゴイネルワイゼン」、91年の「夢二」とあわせて「浪漫三部作」とよばれている作品です。「ツィゴイネルワイゼン」を観たときも同じような感想でしたが、とにかく映像が絢爛豪華で素晴らしいのひとこと。日本美術の感覚を映画の様式にあてはめ、美しく幻想的な映像を構築する監督の手腕はただごとではないですね。

ストーリーはあるような、ないような…という感じで、現実とも空想ともつかない世界を松田優作とともに彷徨することになりますが、ラストシーンにいたると「魂」がこの作品の大きなテーマであることがわかり、なんとなく腑に落ちたところもあるような気がします。とにかくこれは大傑作。「夢二」も、ぜひとも近いうちに観たいと思います。