『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』

2007年 アメリカ(95分)
監督:ジョージ・A・ロメロ
出演:ミシェル・モーガン、ジョシュ・クローズ、ショーン・ロバーツ


ジェイソン(ジョシュ・クローズ)は、ペンシルバニアの山中で夜中に仲間たちと卒業制作のホラー映画を撮影していた。そこで各地で死者がよみがえっているというニュースをラジオで聞きつけた彼らは、急きょ寮へと駆けつける。そして恋人デブラ(ミシェル・モーガン)を無事に発見したジェイソンは、仲間たちとトレーラーで一路家路を目指すが……。

ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロ監督の新作。ロメロ監督はすでに70歳近いはずですが、常に新しい試みを取り入れて、単なるホラーの枠にとどまらないゾンビ映画を発表し続けています。

この映画では、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」や「クローバーフィールド」といった作品でおなじみになった、手持ちカメラによるPOV(主観撮影)という手法を導入し、鑑賞者が第三者的な立場ではなく、生存者の一員としての視点で映像を眺めるという効果を与えています。また、目の前で人の命が危険にさらされているにも関わらず、カメラを回し記録し続けること、そしてそれを情報として提供することを使命と考える主人公を描くことによって、メディアに対するロメロ監督の批判的な視線を浮かび上がらせる役割も果たしています。

登場人物のセリフの中で、暴力的な行為を繰り返しそれが当たり前になってしまうと、相手を傷つけているという感覚が麻痺してしまうという趣旨のものがありましたが、これを映像として表現することにより、本当に恐ろしいのはゾンビよりも人間の心であるというテーマも主張されています。

わらわらと湧いてくるゾンビたちを次々になぎ倒すサスペンスやアクションを期待してしまうと、物足りなさを覚えることになると思いますが、ゾンビ映画という枠の中で、新しい手法を積極的に取り入れながら、社会に対するメッセージを発信し続けるロメロ監督の姿勢をこそ評価したい映画です。