石持浅海『ガーディアン』

幼時に父を亡くしてから、勅使河原冴はずっと不思議な力に護られてきた。彼女が「ガーディアン」と名づけたその力は、彼女の危険を回避するためだけに発動する。突発的な事故ならバリアーとして。悪意をもった攻撃には、より激しく。では、彼女に殺意をもった相手は?ガーディアンに、殺されるのだろうか。特別な能力は、様々な思惑と、予想もしない事件を呼び寄せる。

「勅使河原冴の章」はいわゆるSF的設定のミステリ。序盤からグイグイひきこまれ、事件が起こり推理を進めるところまでは、どんな意外な真相が待ち受けているのか非常に楽しみに読み進めることができました。ただ、期待が大きくなってしまった分、明かされた事実にはやや拍子抜け。その真相はたぶんないだろう、って途中の考察で否定されてたはずでは…。本格ミステリとしては、魅力的な設定を活かしきれなかった感じがします。


「栗原円の章」は本格ミステリではなくサスペンス。こちらもガーディアンの設定をうまく使ってストーリーを展開させており、さくさく読めてそれなりに楽しめるのですが、人から恐れられかねない特殊な力を持った主人公が、それほど葛藤もなくたんたんと現実を受け止めている点には、ちょっと違和感がありました。そういう方向性を目指した作品ではないのかもしれませんが、「ファイアスターター」や「クロスファイア」とまではいかないまでも、もう少し特殊な力を持ってしまったものの苦悩を描いても面白かったのでは。