東野圭吾『容疑者Xの献身』

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に密かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。

ガリレオシリーズの3作目にして初の長篇、東野氏はこの作品で直木賞を受賞しています。
最初に事件を罪を犯した側から描くいわゆる倒叙ミステリですが、刑事コロンボ古畑任三郎でもよくある「犯人が事件を起こす→犯人の隠蔽工作→犯人の動きを最後まで描ききらずにシーンが変わって探偵役登場」という流れになっているため、犯人が仕上げとして想いもよらないようなトリックを仕掛けているな、というのはなんとなく想像できます。それでも明らかにされた真相は想像のかなり上をいくもので、久しぶりにミステリを読んでトリックで驚かされました。
最近はトリックよりも重いテーマをメインに描く作品が多くなっている東野氏。本作や『ある閉ざされた雪の山荘で』『仮面山荘殺人事件』みたいなトリッキーなミステリももっと読んでみたいところです。


そういえばもうすぐこの小説の映画化作品が公開されるみたいですが、どんな感じに仕上がっているのでしょうか。「犯罪者の純愛」みたいなところを売りにして前面に押し出してしまうと、ちょっと危険な予感はしますが…。10月4日の公開を楽しみに待つことにします。