『みなさん、さようなら』

第76回アカデミー賞外国語映画賞をはじめ、数々の賞に輝いたカナダの巨匠ドゥニ・アルカン監督による2003年の作品。

原題は直訳すると「蛮族の侵入」という意味になるそうで、感動作といった雰囲気の「みなさん、さようなら」とはだいぶニュアンスが違います。実際、映画のストーリーは単純な感動作とはいいにくい内容になっています。
最期の時を迎えようとしている父親に、楽しい時間を過ごさせるため、金にまかせて病院の理事長や職員組合を買収し特別室を作らせる息子。さらに、教師だった父親の教え子に金を払って見舞いに来させたり、痛みに耐えられなくなるとヘロインを入手して投与したりと、死にゆく父親のためとはいえ、問題をなんでも金で解決しようとする姿勢には反発を感じる方も多いと思います。
父親の死の場面にしても、感動的ではあるものの本当にそのやり方でよかったの? という疑問を抱かずにはいられません。ただ、これらはすべてお涙頂戴のための物語ではなく、「死」という「蛮族の侵入」に対して、登場人物がそれぞれ自分の立場でどのように戦ったかの記録だと考えれば、感情移入はできなくても納得はできるように思います。自分が登場人物の誰かだったらどうしたか、を考えながら見ればなかなか面白い作品ではないでしょうか。