ケン・フォレット『大聖堂』

12世紀のイングランド、キングズブリッジ修道院を舞台にした壮大な物語。
建築職人のトムはいつか大聖堂を建築することを夢見て、仕事を探しながら放浪の旅を続ける。やがてキングズブリッジ修道院分院長のフィリップと出会い、ある出来事をきっかけに彼のもとで新たな大聖堂の建築を手がけることになる…。


これは面白かったです!大聖堂を自分の手で建てたいというトムの願いと、キングズブリッジを立派な修道院にしたいというフィリップの願い。この二つの願いを中心に物語が展開するのですが、そこに教会での出世を望みさまざまな陰謀をたくらむウォールラン、シャーリング伯の娘アリエナに結婚を断られたことを恨み彼女に復讐を果たそうとするウィリアム・ハムレイ、ハムレイにシャーリングを奪われた上に父を殺されいつの日か城を取り戻そうと願うアリエナなどさまざまな人物の欲望が絡み合い、本当に波乱万丈としかいいようのない物語になっています。

大量の登場人物とエピソードにも関わらず、余分な要素は一つもなく、ラストシーンにおけるオープニングシーンの謎解きですべてはぴったり収まります。この小説自体が、トムが築き上げようとした大聖堂のごとく、数多くの人物の欲望によって構築されていく巨大な建築物のようです。また、人間ドラマに加えて、大聖堂の建築方法やその考え方についても詳しく説明されていて、個人的にはこちらもたいへん参考になりました。

上中下巻あわせて1800ページの超大作ですが、ゴールデンウィークのお供におすすめします。


ちなみに著者のホームページによると、続編の"World Without End"がすでに欧米では刊行されているようです。早く日本語でも読めるようになるといいですねえ。