アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』

海外SFのオールタイムベスト級の作品として有名なアルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』が復刊されました。読みたいと思った頃にはすでに絶版になっていたので、発見したときには即座に購入しました。


ジョウント効果」と呼ばれるテレポーテーション能力が全人類に備わっていることが明らかになった25世紀の世界。爆撃された宇宙船ノーマッド号に、唯一人取り残され170日以上も漂流していたガリー・フォイルは、発信した救助信号を無視して去っていった宇宙船「ヴォーガ」への復讐を誓う…。


いやー、やっぱり面白かったです。解説の中で「ベスターは、ガラクタを寄せ集めて芸術品を創りあげた」という書評が紹介されていますが、なるほどという感じです。なにしろ冒頭から変てこなところがいろいろとあって、例えば

  フォイルが復讐を誓うのは、人物が相手でなくなぜか宇宙船であり、
  復讐をとげるため、物理的に宇宙船を破壊しに行く。

とか、

  ジョウント効果は、たまたま命の危険にさらされたときに発動されたので、
  同じ状況を再現するため、志願者を実験にかけてその大部分を殺してしまう。

とか、一歩間違えればトンデモ系になってしまいそうで、小説を構成するパーツはたしかにガラクタといってもおかしくありません。しかし、小説全体を見渡せば冒頭からラストまでハイテンションで突っ走り、単純に娯楽小説としてもまさに大傑作。いまさら私が声高にいうことでもないですが、SFファンのみならず面白い小説を読みたいと思っているすべての人に読んでほしい作品です。