山本弘『MM9』

地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、怪獣対策のスペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」、略して「気特対」が日夜を問わず日本の防衛に駆け回っていた。多種多様な怪獣たちの出現予測に正体の特定、そして自衛隊と連携するべく直接現場で作戦行動を執る。世論の非難を浴びることも度々で、誰かがやらなければならないこととはいえ、苛酷で割に合わない任務だ。それぞれの職能を活かして、相次ぐ難局に立ち向かう気特対部員たちの活躍を描く、本格SF+怪獣小説。

自然災害の一種として「怪獣災害」が存在する世界を舞台に、「気特対(気象庁特異生物対策部)」の活躍を描くSF。タイトルにもある「MM」とは怪獣のサイズを表す「モンスター・マグニチュード」の略称です。

怪獣の登場から大暴れしたあげくに退治されるまでの一連の流れは、完全にウルトラマンシリーズなどの特撮もののパロディですが、そこは「と学会」会長でもある山本弘さんによるSF作品、巨大怪獣という存在の抱える根本的な矛盾を「多重人間原理」と呼ばれる理論によってきっちり理屈付けしています。

設定はともかく、個々のエピソードについては普通に面白いかなという程度の印象だったのですが、物理法則を逸脱できる怪獣という存在を説明するためだけに導入されたと思っていた「多重人間原理」を用いた鮮やかなオチにはかなり驚愕。物語のスケールが一気に大きくなり、それに伴って本書に対する評価も大幅に上昇しました。これは凄い!