池上永一『パガージマヌパナス』

「ワジワジーッ（不愉快だわ）」ガジュマルの樹の下で19歳の綾乃は呟く。神様のお告げで、ユタ（巫女）になれと命ぜられたのだ。困った彼女は86歳の大親友オージャーガンマーに相談するが…。

第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した、池上永一氏のデビュー作。沖縄を舞台にした作品を発表し続けている著者の原点となった小説だけに、沖縄のゆったりとした時間の流れがストレートに描かれていて、読んでいておおらかな気分になれました。

綾乃とオージャーガンマーが繰り広げるバカ話や、ユタになることをせまる神様から逃げ回るドタバタで楽しませてくれる前半だけだと、面白いけどそれだけのお話という感じだったのですが、ユタになることを決意した綾乃の成長ぶりを描く後半で評価は急上昇。ラストは途中で想像できてしまうものの、それでも最後まで楽しんで感動することが出来たのは、著者の実力というところでしょう。

来週には傑作との呼び声高い『シャングリ・ラ』が文庫化されるみたいです。こちらも未読なので、今からとても楽しみにしています。