『インビジブル』

2000年 アメリカ(112分)
監督:ポール・ヴァーホーベン
出演:ケヴィン・ベーコンエリザベス・シュージョシュ・ブローリン


自らの身体を実験台に、DNA操作による人体の透明化に成功した科学者・セバスチャン(ケヴィン・ベーコン)。だが研究は未完成で、彼は元の姿に戻れなくなってしまう。一生自分の姿を鏡で見る事ができないという彼の絶望は、やがて研究仲間への憎悪に変わって行く。

H.G.ウェルズの「透明人間」を下敷きにした、ヴァーホーベン監督の映画ということで、どんな作品になっているのかワクワクしながら観たのですが…。
前半はまず期待通りの出来でした。透明になるときは皮膚から始まって、筋肉・内臓・骨格の順に消えていき、元に戻るときはこれとは逆に注入された薬が血管を通り、体の内部から形が現れはじめる。従来の透明人間の描写とは全く異なるやりすぎ感は、いかにもヴァーホーベン監督らしいですし、大方の男性の期待通り女性の部屋に忍び込んであれこれやっちゃうところもナイス。
ちょっと残念だったのは、セバスチャンが狂気に陥ったあとの展開。SFホラーとしてはなかなかよくできていて、その点では充分楽しめたのですが、このあたりの展開はいたって普通でした。一般的にはこれぐらいでおさめておいた方が、ウケがいいんだと思いますけど、ヴァーホーベン監督にはもっと無茶苦茶やってほしかったかな、というのが正直な感想。せっかくなんでもやってくれそうなケヴィン・ベーコンが主演してるのに、もったいない…。もしかしたらこの作品で監督が目指したのは、面白いストーリーを展開することよりも、透明人間という題材を用いていかに目新しい映像を創り出すかということだったのかな、と少し感じるところもあるんですけどね。
全体としては監督のこだわりを随所に盛り込みつつ、エンターテイメントとしてもよくまとまった手堅い映画。ヴァーホーベン監督に対して手堅いという言葉をあまり使いたくはないのですが、それを気にしなければ娯楽映画として及第点以上のレベルにある作品だと思います。