『ONCE ダブリンの街角で』

2006年 アイルランド(87分)
監督:ジョン・カーニー
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ、ヒュー・ウォルシュ


ダブリンの街角で毎日のようにギターをかき鳴らす男(グレン・ハンサード)は、ある日、チェコ移民の女(マルケタ・イルグロヴァ)と出会う。ひょんなことから彼女にピアノの才能があることを知った男は、自分が書いた曲を彼女と一緒に演奏してみることに。すると、そのセッションは想像以上の素晴らしいものとなり……。

しまった、これは劇場のスクリーンで観るべき映画でした…。
音楽に乗せて自らの思いを伝える、といってしまうとなんだかミュージカル映画のようですが、さにあらず。一見シンプルに見える男と女の関係が意外と複雑で、お互い想いを寄せ合っているように見えて実は少しずれている、そんな心のうちを、余計な演出を一切排除し、美しい音楽のみで描く、ミュージカルとはむしろ正反対の映画です。
余韻を残しつつ、二人の将来につい想像をめぐらせてしまうラストシーンも見事。「音楽って素晴らしい!」と声高にアピールすることなく、その素晴らしさを描ききった、音楽映画の傑作だと思います。