『バートン・フィンク』

1991年 アメリカ(116分)
監督:ジョエル・コーエン
出演:ジョン・タトゥーロジョン・グッドマン、ジュディ・ディヴィス


1941年、ニューヨーク。社会派劇作家バートン・フィンク(ジョン・タトゥーロ)は庶民を祝福した芝居の成功により一躍有名人となり、それはハリウッドの目のつけるところとなった。一般大衆と迎合することへの不安を抱きつつロサンゼルスへやってきたバートンは、みすぼらしく奇妙なホテル・アールにチェックインした。キャピトル映画の社長リプニック(マイケル・ラーナー)、鞄持ちのルー(ジョン・ポリト)に会ったバートンは、B級レスリング映画の脚本執筆を依頼され、早速部屋に戻りタイプライターに向かうが…。

社会派の劇作家であるバートンがハリウッドに招かれ、全くの畑違いであるレスリング映画の脚本を書くはめになったことから、極度のスランプに陥ってしまうという筋立ての映画ですが、バートンの苦悩を描きつつもストーリーはよくわからない方向に進み、ラストに近づくにつれて、一体これはなんの話だ?という展開になってきます。
表面的なストーリーだけを追っていると意味不明な部分が多いのは確かですが、作品全体に漂う閉塞感をバートンの苦悩の表れととらえれば、次々に起こる奇妙な出来事のいくつかは、バートンの妄想が現実を侵食してきたものといえそうです。どこまでが本当に起こったことで、どこからが妄想の産物なのか、もしかしたら正解はないのかもしれませんが、ああでもないこうでもないといろいろ考えてみると非常に楽しいです。個人的にはロサンゼルス行きが決まって不安いっぱいになった時点から、すでに少しずつ妄想は始まっているのではないかと思うのですが、はたして…。