『スカイ・クロラ』

2008年 日本(121分)
監督:押井守


ショーとしての戦争が行われる、仮初めの平和の時代。永遠に年をとらない「キルドレ」のユーイチは、新たに兎離州基地に配属となった。過去の記憶のない彼だが、初めて乗る機体も身体に馴染み、エースの座に着く。基地司令のスイトはそんなユーイチを複雑な眼差しで見つめていた。そんなある日同僚のパイロット、ユダガワが撃墜され死亡してしまう。墜とした相手は、「ティーチャー」となのる敵のエースパイロットだった……。

原作を読んだことがないと、ストーリーがわかりにくいという話を聞いていたので、心配しながら観にいったのですが、押井監督の作品としては割と親切に説明がなされていて、特に難解な映画だとは思いませんでした。ただいろいろ考えながら観たほうが楽しめる映画であることは間違いなさそうです。全体を通してみるとやや中だるみは感じたものの、終盤の「実はそういう話だったのか!」という衝撃はなかなかのもの。ストーリーについての情報がほぼゼロの状態で観たのは、大正解でした。

話題になっていた空戦の場面の迫力はかなりのもの。戦闘シーンの圧倒的な映像と、それ以外の平板ともいえる映像のギャップに多少の違和感を感じますが、「キルドレにとっての真の人生は空の上だけ」ということを表しているのかな、とも思ったり。

やや不満が残るのは声優について。監督がいろいろと考慮したうえで、プロの声優ではなく俳優を起用したということのようですが、個人的にはちょっと微妙かな…。

押井守監督が映画「スカイ・クロラ」で若手声優を使わなかった理由


特定のキャラクターへの感情移入がしにくい構成と、「情報としての物語は提示しました、あとは皆さんでお考え下さい」という、ちょっと突き放したような結末とで、多少観る人を選ぶ映画ではあると思います。映像として表現されているものの背景に何があるのかを想像しながら映画を観れば、かなり楽しめるのではないでしょうか。