伊坂幸太郎『死神の精度』

主人公の死神は、死亡予定者に人間のフリをして接触し、7日間観察した上で「可」か「見送り」を判定し情報部へ報告。「可」の場合、対象者は8日目に死亡することになる。人間が生きるべきかそれとも死ぬべきかをめぐるヒューマンドラマ的な展開が想像されますが、死神には人間の感情が理解できないため、よほどのことがないかぎり基本的には「可」になってしまいます。人間の死というテーマの重さと語り口の軽さのギャップ、死神と人間たちとのずれた会話、そして死神のルール設定をいかした展開が、非常に魅力的な作品になっています。

中でもお気に入りは、死神が吹雪の山荘の連続殺人事件に巻き込まれる「吹雪に死神」と、殺人犯の最後の旅に同行することになる「旅路を死神」。特に前者は死神の設定を存分に活用した、SF的設定のミステリの傑作。伊坂幸太郎をミステリの作家だとは思っていなかったのですが、こういうこともできるんですね。改めて感心しました。