連城三紀彦『白光』

夏の日に、ある家庭で起こった4歳の少女の殺人事件。小学生の一人娘を持つ夫婦と舅が暮らす、一見平凡な家庭に何があったのか?何の罪もないはずの少女が殺されなければならなかった理由はなんだったのか?

殺された少女をめぐる人々が、それぞれを独白する形式で物語は進んでいくのですが、どの人物も勝手な思い込みや、さまざまな疑心暗鬼にとらわれていたり、誰かを守ろうと嘘をついていたりするので、読者に提示される事件の真相は次々とひっくり返され、最後の最後まで真実は明らかになりません。いわゆる「藪の中」パターン(映画でいうところの『羅生門』パターンですね)は、連城三紀彦氏の得意とするところですが、この作品はこれに、すべての主要登場人物が犯人である仮説を順々に提示してはひっくり返す「クリスチアナ・ブランド」パターンをミックスして、かなりの傑作になっていると思います。

この作品以降、連城氏はミステリーを発表していませんが(『流れ星と遊んだころ』はミステリーじゃないですよね…)、個人的には再びミステリーの一線に帰ってくる日をずっと心待ちにしています。