『つぐない』

アカデミー賞作品賞にもノミネートされたこの作品、原作はイアン・マキューアンの『贖罪』。映画の公開にあわせたのか、こちらは先月文庫化されています。

1930年代後半の戦争が近づきつつあるイギリス。政府官僚の長女セシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と思いを通わせ合うようになる。しかし、小説家を目指す多感な妹ブライオニー(シーアシャ・ローナン)は二人の関係を誤解し、それがきっかけで彼女のついたうそが、ロビーに無実の罪を着せ、二人の人生を大きく狂わせることになる。


キーラ・ナイトレイジェームズ・マカヴォイの主演ですが、一番印象に残るのはブライオニー役のシーアシャ・ローナン。繊細で多感な年頃の少女の聡明さと、ナイーブな雰囲気をいかにも自然に演じ、悲劇のきっかけとなるいくつかのシーンに非常に説得力を与えています。彼女に引っ張られたのかキーラ・ナイトレイもよかったのではないでしょうか。彼女のいつも固い感じの表情がこの役にあっていたのかもしれませんが。

映画の構成も秀逸で、最後の告白としてラストで語られる真実の衝撃はなかなかのもの(といってもあっと驚く結末、みたいなお話ではまったくないですが)。救いのない物語ではありますが、文芸映画が好きな方には大いにお勧めしたい作品です。